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ポーの「スフィンクス」

 僕は以前、HPで読書ノートを書いていたのだけど、最後の更新から5年間も放ったらかしにしてしまい、その間に読んだ色々な本は記憶から薄れつつある。というよりも、このHPを書いていた時期だけはきちんと本の感想を書いており、手前味噌だが自分で読み返しても、当時の自分の考え方がわかって結構面白い。

 このブログでは読み返したり、急に思い出したりした本のことも書いてみようかなと思う。まずはポーの「スフィンクス」(創元推理文庫『ポオ小説全集4』所収)から。この短編はたったの6ページなのだけれども、どうも気になって何度も読んでしまう。ポーの短編にはそういうのが結構あるので、いずれ紹介したいと思う。

 とりあえず「スフィンクス」だが、ミクロの昆虫を戦艦大和級のビッグサイズの怪物に誤認してしまうという、エッセンスを言ってしまえば誠に他愛ない話である。

 しかしそんな錯誤を犯してしまう精神状況に関する描写がとても面白い。この作品は次のように始まる。「ニューヨークでコレラが猖獗を極めたのは、ちょうど僕が或る親戚から、ハドソン河の岸辺にある美しい別荘で二週間、世間と没交渉に一緒に暮らそうという招待を受け、その厚情に甘えていた間であった。(中略)知人の死の報せを耳にすることなしには、一日たりとも経過することがなかったのである(丸谷才一訳)」。

 語り手は、現実世界でバタバタ人が死んでいくのを、引きこもった郊外の書斎からTVのニュースのごとく楽しむのである。何だか僕らの身近な状況に似ている気がする。

 ただ、この語り手はもうちょっと切迫していて、自分も死ぬかもしれないことに怯えている。そして、死神を見ようとしてみる。タイトルと同じスフィンクスなる奇妙な昆虫が本当に存在するのか、ポーの空想なのか僕にはわからない。でも、見ていることの客観的事実の危うさ、ちょっとした精神のバランスで現実の基盤が崩れ去るところ、そんなところなどが好きで、何度も読み返してしまう。

テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

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